MBSEの普及のために、
「新しいスタンダード」を
生み出す

MBSEの
普及のために、
「新しい
スタンダード」を
生み出す

SE職

武倉 聡太郎

2019年入社/サイエンス学部卒業。オーストラリアで学生時代を過ごした後、グローバルで活躍したいという思いを抱え図研に入社。新たな開発アプローチである「MBSE」にSEとして携わり、新規事業の拡大を肌で感じている。

  • 登場する社員は仮名表記です。

「これからの“モノづくり”を大きく変える」と期待される開発アプローチ、MBSE(Model-Based Systems Engineering)。武倉聡太郎は、入社1年目から図研におけるMBSEの取り組みに最先端で携わってきた。右も左もわからなかった状態から、MBSEの“伝道師”を志すまでをたどる。

高度化かつ複雑化するシステムを実現する
「MBSE」というアプローチ

武倉が就職にあたって志向していたのは、グローバルに活躍できる環境だった。シドニーの大学で学び、国籍や人種などさまざまなバックグラウンドを持つクラスメイト達に触れてきた。その経験や英語のスキルを、自分の強みとして生かしたいという思いがあった。

製造業などを幅広く検討するなかで、図研の存在を知りました。プリント基板設計用CADシステムにおいて国内だけではなく海外で高いシェアを誇ることを知り、ここなら自分の能力を発揮できるのではと考えたのです

武倉がSEとして配属されたのは、新規事業を担う新しい組織。図研の新たなソリューションである、「MBSE」に関するプリセールスや導入支援を担当する部署だった。

MBSE(Model-Based Systems Engineering)は、航空・宇宙、自動車関連などの高度化、複雑化するシステムの設計開発をより効率的に行える次世代の開発手法だ。

例えば自動車ではスマートフォンとの連携など、さまざまな他のシステムとのやり取りが当たり前になっている。さらに自動運転では、信号や標識だけでなく、道路を走る他の自動車や、歩行者など、他のシステムとの相互の影響が多種多様になっている。昨今、システム間の連携や相互作用は複雑さを増し、全体像の把握が難しくなってきているが、従来の手法では開発期間やコストが桁違いに膨れ上がってしまう。このような複雑な相互作用のあるシステムに対して、全体像を把握しながら最適化を図るのがシステムズエンジニアリングである。

MBSEは、これを「モデル」と呼ばれる”情報の構造体“を用いることで行う。モデルには、システム要求や制約、アーキテクチャ、分析、妥当性確認など、設計に必要な全ての情報が関連付けられて格納されている。モデルから、必要な情報を必要な視点で任意の形で取り出すことにより、効率的かつ一貫したシステムズエンジニアリングを実現しようという考え方だ。

モデルには、設計思想や実装の過程などを他の情報との関係も含めて全てストックすることができるため、安全性の根拠を示す場面などでも役立ちます。ただ、配属当初はMBSEについて全く理解できず、『難しいところに来てしまった』という印象でした。そもそも、従来の開発手法についての知識すらありませんでしたから

図研にとってもMBSEは近年始まった新規事業であり、ノウハウの蓄積も並行して進めていた。MBSEの有識者である、イノベーティブ・デザインLLCの石橋金徳氏との定期的なミーティングもそのひとつだ。入社間もない武倉も上司と共に出席し、最先端の見識に触れた。

設計の現場から得た知見を豊富に語っていただき、MBSEをもっと理解したいと思うようになりました。図研はMBSEの取り組みが早かったこともあり、石橋氏からは『これからMBSEの強豪になりましょう』と声をかけていただいたのです。図研が評価されたことがとても嬉しく、その先のモチベーションにもつながりました

思い出したくない失敗を、
経験と自信で塗り替える

2019年、MBSEのモデリングツール「GENESYS」を持つアメリカのVitech社(現Zuken Vitech)が図研のグループ企業となった。入社1年目の武倉も、アメリカ出張に同行するなどし、Vitech社とコミュニケーションを図った。

MBSEに関するレビューでは、500ページにわたる英語の資料を全て和訳し、先輩と内容について共有したあと、『この理解で合っていますか』とVitech社の社長に直接確認しました。最初は何の抵抗もなく気軽に話していたのですが、後に​当時の社長がMBSE界を代表する重鎮であるということがわかり、背筋が伸びる思いでした

入社1年目の12月。武倉は慶應義塾大学大学院でMBSEに関する「1日トレーニング」を担当することになった。受講者は約30名の社会人学生。MBSEの概念からツールの操作方法に至るまで、武倉が資料を全て準備し、当日の説明も任されたのだ。

MBSEが関係する分野は多岐に渡るため、当日もさまざまな業界の方が参加されました。MBSEの理解度にもばらつきがあると聞き、MBSEが生まれた背景や概念などの基礎知識に重点を置いて、後半は具体的なストーリーに基づくケーススタディを行うようにしました

十分に準備した、つもりだった。だが武倉は「正直、思い出したくないほどの出来」とその日を振り返る。

まず、武倉を襲ったのは緊張だった。人前に立つ経験も少なかったため、思うような説明や進行ができない。そしてなにより、MBSEに対する受講者の期待値は高く、トレーニングの合間には鋭い質問が次々と飛んできた。

自分の理解が足りなかったこともあり、相手が何を聞きたいのか汲み取ることができなかったのです。先輩のフォローもあり、なんとか1日を終えたものの、苦い記憶だけが残りました

その後、武倉はプリセールスに同行し、先輩の仕事ぶりを間近で見て学んだ。必死に会話についていきながら、顧客が何を課題に感じ、MBSEに何を求めているのか、徐々に理解を深めていった。

リベンジの機会は思いのほか早くやってきた。前回のセミナーから8ヶ月後、武倉は再び「1日トレーニング」を担当する。前回と異なりオンライン開催となったが、そこには参加者を前に堂々と語る武倉の姿があった。

プリセールスで『こう話せばきちんと伝わる』という勘所をつかめたので、全体の構成を見直し、自信を持って話せました。2回とも受講された方からは『格段に良くなった』という評価をいただけて、安心しましたね。準備は大変でしたが、MBSEの理解がさらに深まり、成長を実感した出来事だったと感じます

型にはまらないからこそ、「新しい型」を生み出せる

MBSEの歴史は意外に古く、その誕生は1960年代のアメリカにまでさかのぼる。一方、日本では近年になって注目された概念であり、その市場はこれから本格的に立ち上がろうかという段階だ。

これまでの「モノづくり」の手法と大きく異なる概念だけに、理解を得ることは簡単ではない。「自分自身も、図研としても、学ぶべきことがまだまだたくさんある」と武倉はいう。

プリセールスでは、費用対効果についての質問をよくいただきます。導入すればどれほどの効果があるのか、お客様が知りたがるのは当然のことです。ただ、MBSEは開発プロセスそのものを変えてしまう手法なので、単純に『従来に比べコストがいくら削減できる』といった定量的な比較が難しい。そのうえで、どう説明すれば納得いただけるか、考えなくてはなりません

図研が業界をリードする新規事業、さらに導入事例が極端に少ない新しいツール。この二軸で先例がないという意味で、定型化されたアプローチはまだどこにも存在していない。裏を返せば、武倉自身がMBSE分野の先端を走るSEとして、新しいスタンダードを作っていると言える。

海外投資をしてまで始めた新事業に自分のような若手をつけたのは、図研の社風なのかもしれません。電気設計領域の分野でスタンダードを確立した経営層やベテランの先輩たちも、若いときにはこのようなチャレンジをしていたのでしょうから

プリセールスを重ねるなかで、具体的な事例を示したり、デモを実施したりと、ある程度の「型」は見えてきた。導入に至るケースはまだ多くないが、顧客訪問やセミナーなどの機会は増えており、武倉は「ビジネスが徐々に大きくなっていく実感がある」と手応えを感じている。

直近の目標は、SEとして独り立ちすることです。先輩に頼らず、一人でお客様と対話できるよう、もっとSEのスキルを磨けたらと思っています。将来的には『MBSEのことなら武倉に聞けば間違いない』と、社内はもちろん社外からも認知される存在になりたいですね

武倉は「型にはまらない人が新規事業に向いている」と話す。思い返せば、武倉自身も型にはまらない人間だ。海外の大学で学び、その英語力を駆使しながら、MBSEの普及という新しいビジネスに向き合ってきた。

型にはまらないからこそ、「新しい型」を作ることができる。MBSEの“伝道師”として、武倉は「次はGENESYSを業界のスタンダードにしたい」と意気込む。

Questions & Answers

入社前後で図研に対する印象は変わった?
IT分野とはいえ、40年以上続いている会社なので、入社前は堅実な会社のイメージでした。しかし、入社してみると自由にいろいろやらせてもらえる環境があり、チャレンジ精神がある会社だと思いました。
図研の好きなところは?
若手にもいろいろ任せてくれて、仕事の進め方も早いうちから自分である程度は決められるのが良いと思います。私は入社した時から製品の操作トレーニングやセミナーでの講演を担当できたことが良かったです。
職場にはどんな同僚・先輩・上司が多い?
部署の上司や先輩全員がすごく頼りになります。仕事の進め方など不明点は質問しやすく、お客様へのソリューション紹介なども、慣れないうちはフォローについてくれるので安心して業務に臨むことができます。
学生時代の経験が役に立っていることは?
英語に慣れているという点は大きいかと思います。海外の担当者とのやり取りや国際的なセミナーの聴講など、英語の環境に物怖じせず飛び込めることは非常に役立っています。
休日はどのように過ごしてる?
休日は意図的に仕事と離れるようにしています。家の外にいることが多く、日帰りで小旅行をすることが好きです。筋トレが好きで、トレーニングジムにはよく行っています。